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放射線部門の
医療安全のヒント

合言葉は、SAFETY FIRST。
放射線部門で活躍するみなさまを守るための
医療安全について考えていきます。

vol.3 医療機器の安全管理編

医療機器の安心・安全は、
定期的な保守点検によって保たれます。

医療現場における事故やトラブルを防ぐために、欠かすことができないのが医療機器の安全管理です。
X線防護衣もその一つ。みなさまの職場では、確実な定期点検と情報共有ができていますか?

〈参考〉医療法の安全確保─医療機器の保守点検と感染防止対策/野口雄司・鍵谷昭典
(『医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス Vol.47 No.3』別刷 2016年)

医療機器の安全管理は「医療法」で定められています。

平成19(2007)年4月、医療機関の管理・運営等について定めた「医療法」の大きな改正が行われました。中でも重点的に取り組まれたのが“安全確保”に関わる部分です。その一つとして「医療機器の保守点検・安全使用に関する体制」が挙げられ、新たに右のような要件が記載されました。この2年前の「薬事法」の改正でも同趣旨の内容が盛り込まれており、いずれも“定期的な保守点検”の重要性が強調されています。

*メーカーの安全管理体制等が定められた「薬事法(現・薬機法)」。平成17(2005)年改正では、「安全上のリスクのある医療機器は“添付文書”(警告や使用上の注意・品目仕様・その他の重要事項を記載した書面)に基づき管理する」ということが明記されました。

■ 「医療法」の平成19年改正より

〈安全確保に関する四本柱〉
1.医療の安全を確保するための措置
2.医療施設における院内感染の防止
3.医薬品の安全管理体制
4.医療機器の保守点検・安全使用に関する体制

ポイント、●「医療機器安全管理責任者」の設置、●医療従事者への研修の実施、●保守点検の計画の作成・実施、●安全使用のための情報収集・改善策の実施

伸び悩む、画像医療システムの保守点検実施率。

画像医療システムの保守点検実施率を見てみると、法改正から10年が経過した現在も必ずしも十分とはいえないのが現状です。一部の機器については診療報酬上の施設基準として保守点検計画書の提出等が求められているものもありますが、全体からみると保守点検実施率は未だ少ないようです。また、保守点検実施率は徐々に上がってきましたが、装置別にはバラツキが大きく、CT・MRI装置はそれぞれ98%以上となっている一方、一般撮影装置は約75%程度と低水準です。保守点検には施設内で自主的に行う日常点検とメーカーによる定期点検があり、とくに重要なのは後者ですが、費用負担のこともあり、実施率は伸び悩む傾向にあります。

■保守点検実施率、※JIRA『第13回 画像医療システム等の導入状況と 安全確保状況に関する調査報告書』より抜粋・編集
Notice たとえば、こんな事故・トラブルが起こっています。
● 患者が来室し、検査を開始しようとしたら、正常に稼働しなかった。
● 撮影後、モニタで画像を確認したら、なにも写っていなかった。
● 天井吊り下げ型の装置が落下した。
● 寝台の駆動中に患者の体の位置がずれたが、安全装置が働かなかった。
● 線量が正しく表示されず、大量のX線の照射を行ってしまった。

事故を未然に防ぐために、定期点検は必ず実施しましょう。

近年は医療機器の買い替え年数が長期化し、ほとんどの装置が10年以上にわたって使用されています。アナログ式の撮影装置に至っては20年間以上使われていることもありますが、使用年数が長くなるほど不具合が出る可能性が高まります。不安要素の多い現場は医療機関としての信頼性に関わるだけでなく、医師・看護師等の医療従事者にも敬遠されがちです。無用なトラブルを防ぎ、十分な安全性を確保するために、みなさんの施設でも、いま一度、保守点検の実施状況等に目を向けてはいかがでしょうか。

“見える化”が、点検・管理のキーワード。

■「JCI(国際病院機能評価機構)」では、X線防護衣の管理が義務づけられています。

JCIは、「医療の質と患者安全の継続的な改善」を目的として設立されたグローバルな医療評価機関です。JCI認証を取得することはまさに世界水準の医療を提供する医療機関の証といえますが、世界でもっとも厳しいといわれるこのJCI認証の評価項目の一つに、放射線を使用する際のリスクを軽減するための「X線防護衣の管理」が挙げられています。

■ 重視されているのが、「点検結果がひと目でわかること」。

X線防護衣の安全評価に関するJCIの要求は細かく、定期点検に関連しては、その実施日や結果の“見える化”が求められています。X線は目に見えないものであり、万一、X線防護衣に不具合があると、気づかぬうちに被ばくする可能性があります。そのリスクから身を守るために、一着一着の状態が「だれにでも、ひと目でわかること」が重要であり、各人がつねにX線防護衣の安全性を確認したり、情報を共有しあったりできる環境が必要だと考えられているのです。

JCI認証を取得した国内の医療施設が実施している“見える化”の例です。同施設が保有するX線防護衣は約700着。型番や点検日などを記載したIDカードを専用フォルダに入れて装着しています。

■ 医療トレーサビリティの観点でも“見える化”は大切な課題です。

一方、医療機器のメーカーには、医療トレーサビリティの確立が求められています。これは、製品が製造・販売され、最終的に廃棄されるまでのすべての流通過程を明確にすることをいいます。X線防護衣ももちろん例外ではなく、一着一着がどこの施設でどのような状態で使用されているかがつねに可視化されることで、メーカーは販売後の安全確保や修理のサポート、今後の改善などに結びつけることができます。それを実現するためにも、各施設におけるX線防護衣の情報の“見える化”は欠かすことができません。

SAFETY FIRST X線防護用品にできること

X線防護衣の安全管理ポイントは、「正しい収納」と「定期点検」。

収納

X線防護衣は2枚の表面材で遮へい材を挟み込んだ積層構造です。紙を何度も折りたたむとそこから傷んでいくように、遮へい材も折りたたんだり、無造作に置いたりを繰り返すと亀裂や穴が生じやすくなります。使用後は必ず専用ハンガーに掛けて保管してください。

定期点検

6カ月に1度を目安にX線透視検査を行い、遮へい材の状態を確認してください。

写真:遮へい材に亀裂が見つかったX線防護衣

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